maniacs 工房長 大谷です。ちょうど2ヶ月前に、Golf8用MCB開発中!の記事を掲載しましたが、その改良した二次試作ができ上がってきまして、早速装着確認を行いました。前の記事でも書きました、一次試作の状態でも、そのまま販売して問題ないレベルにあったのですが、完全に納得のいく物にしてから発売したいということで、あえて発売を遅らせてでも今回の二次試作を行うという決断をしました。
一次試作で「あとチョット」の納得がいかずに再試作に突入したのは、フロントのブラケットです。一次試作を装着したデモカーは、その状態でお客様にもどんどん試乗してもらって、お乗り頂いたお客様からは押並べて好評価をいただいていますので、「そのまま販売して問題ないレベル」というのは全くウソや誇張じゃないのですが、開発メンバーである工房長、杉田マネージャー、熊澤チーフが、何が気に入らなかったかというと、大きく2点です。


ひとつは、Golf8のもともとのボディ剛性が非常に高いために、良路を普通に走っているときにはMCBがあまり動いていない(MCBが動く必要がない)感じなのです。路面の凸凹を通過したり、ステアリングを操作して、大き目な入力があったときに初めてMCBが動く、という感触です。肝心な時にはしっかり効くので、それで十分と言えば十分なのですが、せっかくMCBを装着したからには、良路をごく普通に走っていても、もう少し頻繁に積極的にMCBが作動して欲しいわけです。
もうひとつは、走行に伴う無用なボディ振動の大半は、MCBの減衰が効いて良い感じに抑えられているのですが、周期の短い微小なプルプルというボディ振動が、僅かに残っています。より大きなガタガタとかブルンという感じの振動が消えている分だけ、残った微細な振動がちょっと気になります。以上2点の不満の考察として、ブラケットのところで力が僅かに逃げていると睨んだわけです。逃げていると言っても100分の何ミリかなので直接見るのは難しく、最も確実な検証方法は二次試作を行って比較評価することです。


っというわけで、バンパーを外して、すでに装着してあるMCB本体を一旦取り外し、MCBを支持している問題のブラケットも取り外します。Golf8用のフロントブラケットはツーピース構成で、車両のレインフォースメント固定部にMCB用のブラケットを装着してから、そのブラケットにフランジを締結して、そのフランジにMCBを固定する構造になっています。写真は、車両から取り外した一次試作のブラケットと、今回装着する二次試作のブラケットを並べて比較しています。
微妙に太っている方が二次試作です。間違い探し的な微妙な違いで、一見して同じに見えるかもしれません。っが、これで取付剛性は200%以上に上がっています。例えば、曲げ剛性を単純化して言うと、断面二次モーメントと言って寸法サイズの3乗のオーダーで効いてきますので、要所を太らせることで剛性は大幅に上がるのです。もちろん設計上の要所をきちんと把握していることが前提です。また捩じれ剛性で言えば、右写真に写っている剛性調整用の穴を削除、溶接箇所の追加等で、これも200%以上に上げています。


こちらの写真は、ブラケットに締結してMCBを支持するフランジで、やはり一次試作と二次試作を並べて撮影しています。こちらは、ブラケットへの締結部の剛性が要所ですので、その部分を重点的に剛性アップしています。そして、もうひとつ、フランジの設計変更点として、車両に対するMCB本体の装着位置を一次試作から4mm上に上げています。たかが4mm、されど4mm。これによって力の伝達方向がストレートになり、MCBが作動する際のブラケットの捩じりモーメント自体を大幅に減らしています。
一次試作の際に、なぜブラケットの剛性を少し控え目に設計したかと言うと、Golf7/7.5での経験からブラケットの剛性を上げ過ぎるとツッパったような硬さが出る場合があり、とくに捩じれ剛性に関しては適度に抑えた方がバランスが良いという経験から、Golf8用もそうしていました。しかし、Golf8のシャシー自体の剛性が思った以上に高くてミスマッチしたわけです。二次試作では、一旦は剛性をできる限り高めるように作りました。もしブラケットの剛性が高すぎたら削って調整して最適値を探る前提です。


っというわけで、曲げ剛性は必要以上と思われるくらいに上げて、捩じれ剛性も容赦なく上げた、二次試作のブラケットを車両に装着し、そのブラケットにMCBを元通りに装着します。二次試作でブラケットを太らせて、各部のクリアランスはやや厳しくなっていますので、装着に十分な余裕(クリアランス、トレランス)があるかどうかも測って細かくチェックしていきます。三次元的な位置関係なので、このへんはCAD上だけでなく現車現物で確認することが欠かせません。
二次試作部品の装着は、Golf8 GTI と Golf8 R-Line の両方ともに行いました。上記した一次試作品でイマイチだったフィーリングは、両方の車で概ね似たような感じに発生していましたので、おそらく、二次試作に変更した際の効果も同じ感じだろうという予測はできます。よって片方の車両だけで確認してもう一方は「以下同文」と省略する手もなくはないのですが、何事も実際に確認してみるまでは分かりません。っで、走行確認をしてみますと、これが驚きの結果に・・・。


まず先に作業完了したGTIに乗ってみますと・・・激変しています。もちろん、良い方向に期待以上で、正直、設計した本人も驚いたというレベルです。良路を普通に走っていてもMCBが良く仕事をしているのが伝わってきます。プルプルという微振動は見事に消えており、まさに求めていた効果です。結果として、すでに十分と思っていた乗り心地が、更に劇的に良くなり、副次的な嬉しい効果として、ハンドリングも切り始めの微舵角のレスポンスが極めて自然になりました。珠玉の感触と言っても良いです。
っで、次にR-Line。ところがこれが少し予想外の結果に。GTIと同じく一次試作の問題点は完全に解消したものの、微妙なツッパリ感が出てしまいました。少し硬すぎる感じです。何が違うのか。おそらくフロントサブフレームがスチール製かアルミ製かの違いが影響していると思います。Golf7/7.5のときにはサブフレームの違いによる相性の問題は起きなかったのですが、Golf8はそれだけフロントセクションの剛性が上がっているということかもしれません。MCBブラケットの剛性はこれで問題ない感触なので、MCB本体の設定をR-Line用は反撥力の弱いものに変更して、ベストなバランスとなりました。
ちなみに、MCB本体の設定は、反撥力の強いものと、弱いものがありますが、減衰力はどちらも同じです。減衰が弱くなってしまうと、効きが少なくなりますが、反撥力だけを弱めてツッパリ感をなくし、減衰は弱めずに効きを確保する、という選択ができるのです。効きが弱くなるわけではないので、ご安心ください。これで、開発メンバー全員が完全に納得できたので、自信をもって発売できます。現在、製品初回ロットを製造しています。
発売は9月中旬になると思いますので、もう少々お待ち下さい。上記のとおり、GTI用と、R-Lineを含むeTSI用(サブフレームの違い)で、製品セットは2種類になる予定です。発売準備ができたらまたブログでお知らせします。
一次試作で「あとチョット」の納得がいかずに再試作に突入したのは、フロントのブラケットです。一次試作を装着したデモカーは、その状態でお客様にもどんどん試乗してもらって、お乗り頂いたお客様からは押並べて好評価をいただいていますので、「そのまま販売して問題ないレベル」というのは全くウソや誇張じゃないのですが、開発メンバーである工房長、杉田マネージャー、熊澤チーフが、何が気に入らなかったかというと、大きく2点です。


ひとつは、Golf8のもともとのボディ剛性が非常に高いために、良路を普通に走っているときにはMCBがあまり動いていない(MCBが動く必要がない)感じなのです。路面の凸凹を通過したり、ステアリングを操作して、大き目な入力があったときに初めてMCBが動く、という感触です。肝心な時にはしっかり効くので、それで十分と言えば十分なのですが、せっかくMCBを装着したからには、良路をごく普通に走っていても、もう少し頻繁に積極的にMCBが作動して欲しいわけです。
もうひとつは、走行に伴う無用なボディ振動の大半は、MCBの減衰が効いて良い感じに抑えられているのですが、周期の短い微小なプルプルというボディ振動が、僅かに残っています。より大きなガタガタとかブルンという感じの振動が消えている分だけ、残った微細な振動がちょっと気になります。以上2点の不満の考察として、ブラケットのところで力が僅かに逃げていると睨んだわけです。逃げていると言っても100分の何ミリかなので直接見るのは難しく、最も確実な検証方法は二次試作を行って比較評価することです。


っというわけで、バンパーを外して、すでに装着してあるMCB本体を一旦取り外し、MCBを支持している問題のブラケットも取り外します。Golf8用のフロントブラケットはツーピース構成で、車両のレインフォースメント固定部にMCB用のブラケットを装着してから、そのブラケットにフランジを締結して、そのフランジにMCBを固定する構造になっています。写真は、車両から取り外した一次試作のブラケットと、今回装着する二次試作のブラケットを並べて比較しています。
微妙に太っている方が二次試作です。間違い探し的な微妙な違いで、一見して同じに見えるかもしれません。っが、これで取付剛性は200%以上に上がっています。例えば、曲げ剛性を単純化して言うと、断面二次モーメントと言って寸法サイズの3乗のオーダーで効いてきますので、要所を太らせることで剛性は大幅に上がるのです。もちろん設計上の要所をきちんと把握していることが前提です。また捩じれ剛性で言えば、右写真に写っている剛性調整用の穴を削除、溶接箇所の追加等で、これも200%以上に上げています。


こちらの写真は、ブラケットに締結してMCBを支持するフランジで、やはり一次試作と二次試作を並べて撮影しています。こちらは、ブラケットへの締結部の剛性が要所ですので、その部分を重点的に剛性アップしています。そして、もうひとつ、フランジの設計変更点として、車両に対するMCB本体の装着位置を一次試作から4mm上に上げています。たかが4mm、されど4mm。これによって力の伝達方向がストレートになり、MCBが作動する際のブラケットの捩じりモーメント自体を大幅に減らしています。
一次試作の際に、なぜブラケットの剛性を少し控え目に設計したかと言うと、Golf7/7.5での経験からブラケットの剛性を上げ過ぎるとツッパったような硬さが出る場合があり、とくに捩じれ剛性に関しては適度に抑えた方がバランスが良いという経験から、Golf8用もそうしていました。しかし、Golf8のシャシー自体の剛性が思った以上に高くてミスマッチしたわけです。二次試作では、一旦は剛性をできる限り高めるように作りました。もしブラケットの剛性が高すぎたら削って調整して最適値を探る前提です。


っというわけで、曲げ剛性は必要以上と思われるくらいに上げて、捩じれ剛性も容赦なく上げた、二次試作のブラケットを車両に装着し、そのブラケットにMCBを元通りに装着します。二次試作でブラケットを太らせて、各部のクリアランスはやや厳しくなっていますので、装着に十分な余裕(クリアランス、トレランス)があるかどうかも測って細かくチェックしていきます。三次元的な位置関係なので、このへんはCAD上だけでなく現車現物で確認することが欠かせません。
二次試作部品の装着は、Golf8 GTI と Golf8 R-Line の両方ともに行いました。上記した一次試作品でイマイチだったフィーリングは、両方の車で概ね似たような感じに発生していましたので、おそらく、二次試作に変更した際の効果も同じ感じだろうという予測はできます。よって片方の車両だけで確認してもう一方は「以下同文」と省略する手もなくはないのですが、何事も実際に確認してみるまでは分かりません。っで、走行確認をしてみますと、これが驚きの結果に・・・。


まず先に作業完了したGTIに乗ってみますと・・・激変しています。もちろん、良い方向に期待以上で、正直、設計した本人も驚いたというレベルです。良路を普通に走っていてもMCBが良く仕事をしているのが伝わってきます。プルプルという微振動は見事に消えており、まさに求めていた効果です。結果として、すでに十分と思っていた乗り心地が、更に劇的に良くなり、副次的な嬉しい効果として、ハンドリングも切り始めの微舵角のレスポンスが極めて自然になりました。珠玉の感触と言っても良いです。
っで、次にR-Line。ところがこれが少し予想外の結果に。GTIと同じく一次試作の問題点は完全に解消したものの、微妙なツッパリ感が出てしまいました。少し硬すぎる感じです。何が違うのか。おそらくフロントサブフレームがスチール製かアルミ製かの違いが影響していると思います。Golf7/7.5のときにはサブフレームの違いによる相性の問題は起きなかったのですが、Golf8はそれだけフロントセクションの剛性が上がっているということかもしれません。MCBブラケットの剛性はこれで問題ない感触なので、MCB本体の設定をR-Line用は反撥力の弱いものに変更して、ベストなバランスとなりました。
ちなみに、MCB本体の設定は、反撥力の強いものと、弱いものがありますが、減衰力はどちらも同じです。減衰が弱くなってしまうと、効きが少なくなりますが、反撥力だけを弱めてツッパリ感をなくし、減衰は弱めずに効きを確保する、という選択ができるのです。効きが弱くなるわけではないので、ご安心ください。これで、開発メンバー全員が完全に納得できたので、自信をもって発売できます。現在、製品初回ロットを製造しています。
発売は9月中旬になると思いますので、もう少々お待ち下さい。上記のとおり、GTI用と、R-Lineを含むeTSI用(サブフレームの違い)で、製品セットは2種類になる予定です。発売準備ができたらまたブログでお知らせします。