maniacs工房長 大谷です。4Ringsグロスブラックリアエンブレムは車両全体の雰囲気がグッとスポーティになるので、最近とくに人気があります。maniacs STADIUMでの施工例も多いです。遠方でお越しになれないお客様等、ご自身で施工されたいケースもあると思いますので、装着方法を写真入りで詳しくご説明いたします。
この施工例は、TTです。ノーマル状態ではクロームメッキの4Ringsエンブレムが装着されています。ブラックに換装する場合、もともと装着されているメッキの4Ringsと寸分違わぬ位置に貼ることが基本です。なので、作業の最初にまずノーマルのエンブレムの外形をマスキングテープで囲って位置をマークします。
その際、テープの幅の端が正確にエンブレムの外周とゼロゼロになるように貼ります。エンブレムはボディの塗装面から僅かに浮いていますので、テープを寄せすぎるとエンブレムの下に滑り込んでしまいます。テープをエンブレムの縁に当てるのではなくて、真正面(=塗装面の鉛直方向)から見てゼロになるように正確に貼ってください。
エンブレムの外形に合わせて長方形にテープを貼ったら、念のためボディパネルの縁からの距離を正確に測って、ノーマルのエンブレムが曲がっていないか確認します。ノーマルの時点で傾いて装着されている場合も稀にあるので、その場合はノーマルと同じく傾けて装着する必要はなく、この貼り替えが傾きを修正する絶好のチャンスです。
修正する場合は、修正分を見込んだ位置にテープを貼り直しますが、この車両はピッタリまっすぐでしたので、ノーマルの位置のとおりを踏襲すればOKです。位置決め外枠長方形を決めたら、エンブレムだけを残してボディ面をマスキングします。これは傷防止の養生のためなので、エンブレムの外形(縁)が微妙に浮いている下にまですべり込ませて、できるだけ内々まで貼り込みます。
マスキングを完了したら、ノーマルのエンブレムを取り外します。糸で切り取る方法もありますが、Audiのエンブレムにはその方法が不向きです。理由は、通常の(他メーカの車両の)エンブレムは両面テープの厚み分だけボディ面から浮いて装着されている場合が多いのに対して、Audiのエンブレムは両面テープの厚みをエンブレムの裏面形状で吸収して、エンブレムの周囲とボディ塗装面との隙間が非常に僅かしかないからです(糸1本の太さの隙間がありません)。
そのため、テグス(=釣り糸、撚りのないナイロン糸)ではうまく切れませんし、撚りのあるナイロン糸等を使うとボディ面にほぼ必ず傷がついてしまいます。Audiのエンブレムを剥がすのには、プラスチックスクレーパーを使いますが、スクレーパーの先に厚みがあるとエンブレムとボディの僅かの隙間に入らないので、まずスクレーパーの先端を薄く研ぐように削り、鋭利にします。ここではベルトサンダーを使っていますが、サンドペーパーでも大丈夫です。
先端を研いだプラスチックスクレーパーをエンブレムとボディ面のマスキングテープの間に差し入れます。最初はスクレーパーの刃幅の真ん中辺りから差し入れるのが入れ易く、きっかけができたら刃先の尖った部分を使うようにします。先端が4Ringsの輪の内側に突き出す際は、その先端が輪の中のマスキングテープの下に潜り込まないように、必ずテープの上に出てくるようにします。
そのまま両面テープのスポンジの厚みの中を切り進む感じで、4Rings全体の外周をぐるっと回っていきます。コツとしてはできるだけスクレーパーの薄い先端だけを使って両面テープの基材(スポンジ状の厚みのある部分)を切るようにし、スクレーパーの手元側、厚みのある部分まで差し込まないようにします。また、スクレーパーは基本的にボディ面に接するように沿わせて、面と並行に使い、面に対して浮かすような角度をつけないことです。
この段階ではテープを切ることが目的なので、くれぐれもエンブレムを引き剥がす方向にコジッたりしてはいけません。先に、4Rings全体の外周をぐるっと一周全部切り終えてから、中ほど3個所の輪と輪が交わったた部分の両面テープを切ります。その際は、どうしてもスクレーパーの手元側、厚みのある部分がエンブレムとボディの間に差し込まれることになりますが、極力エンブレムを浮かさないように、コジって剥がす方向の力が掛らないように注意します。
理由は、エンブレムをコジって剥がすような力が掛かると、引き剥がされるのと反対側が反力でボディ面に強く当たり、ボディのその部分に傷が入ってしまいます。両面テープは引き剥がして取るのではなくて、厚みの真ん中辺で切るもの、と考えるのが正解です。輪の重なり部分3個所を、スクレーパーの先端で慎重に切ると、最後は全く力を入れなくてもエンブレムがそっと外れてきます。
エンブレムの裏面は、左写真のような感じでラダー状になっており、ラダー状の貼付面の高さは周囲よ一段低い凹状になっています。その段差の中に両面テープの厚みを吸収して、装着状態ではメッキエンブレムの縁があたかもボディ面にピッタリ密着しているような装着状態になっているのです。細かいことまで気を使って非常に行き届いた設計、さすがはAudiです。
車両によってはエンブレムの下に泥汚れや細かな砂粒が詰まっていたりします。この車両の場合はとてもに綺麗な状態でしたが、こんなに綺麗な状態の車両は珍しいです。大抵の車両では、両面テープの縁に土埃のような汚れが溜まっています。汚れている場合はこの段階で一旦濡れ雑巾等で良く拭いて、水溶性の汚れをできる限り除去してから次の工程に進みます。汚れたまま作業するとボディに傷をつける原因になります。
プラスチックスクレーパーは最初に刃先を薄く研いで使ったため、ここまでの工程で大抵は多少の刃こぼれになっています。刃こぼれ分をハサミ等で切って短くして研ぎ直します。次の作業では、スクレーパーの先端に多少強度があった方が使い易いので、さっきよりは若干厚めに研いであります。そのスクレーパーの刃の端の方を上手く使って、ボディ面に残った両面テープのスポンジ基材を剥がしていきます。
この時点では、まだ溶剤を使ってはいけません。ドライで剥がすのは地道で手間が掛りますが、それでもできる限りギリギリまでドライで剥がした方が着実に作業が進み、周囲がぐちゃぐちゃに汚れて嫌な気分になったりせずに、最終的には全体の手間も少なく済むと思います。この段階では粘着剤のネバネバはボディ面に残っても良いので、まずスポンジ基材を残らず全部除去するようにします。今の季節は温度の問題はありませんが、冬場に硬くて作業が捗らない場合はヘアドライヤー等で温めながらスクレーパーで削ぐと、やり易いです。
4Ringsの4つの輪のスポンジを全部綺麗にこそぎ落とすには、結構な根気が要ります。端から丹念にやっても良いですが、飽きてしまった場合はやり易そうなところからやるでも良いです。ポイントは、今自分がどの個所のどのスポンジを除去しようとしているのか、きちんと自覚的に狙いを定めてスクレーパーを使うことです。
だんだん気持ちが散漫になってくると、なんとなくその辺りを全体的にガーっと一気にこそげないかなぁ、などと狙いのハッキリしない漫然としたスクレーパーの使い方になり易いです。横着、ガサツ、ずぼらは、この作業には大敵です。剥がしたカスはそのまま下に落とすと、バンパーにあたりを汚したり、床に散らかすと履物の裏にくっついたりして始末に悪いので、すぐ脇に裏返した養生テープを貼って回収していきます。単調な作業ですが、回収したカスが溜まると成果物のようで多少の励みにもなります。
両面テープのスポンジ基材を全部除去したら、残った粘着剤のネバネバも同様にスクレーパーでこそいで、可能な限り除去していきます。ネバネバにある程度厚みがある個所は、削ぐようにして除去できます。スポンジを剥がしたのと同じように、地道に、単年に、根気強く剥がしていきます。
このへんで、もうそろそろ溶剤で溶かして一気に取りたい気分になりますが、粘着剤がまだたくさん残っている段階で溶剤で溶かしてしまうと、ネバネバが生き返って尚のことネバネバだらけになり本当に始末に悪いので、ここは辛抱強く頑張った方が良いです。
もうこれ以上は削ぎ取ることが無理、という段階まで来てから、始めて溶剤を使います。使える可能性のある溶剤は、大雑把に言って3通りあります。99工房のシリコンオフは、石油系でペイント薄め液とほぼ同じです。これが一番安全に使えるので、お奨めです。脱脂用のイソプロピルアルコールも粘着剤剥がしに使えますが、ボディの塗装を膨潤させるのでアルコールは直接吹き掛けてはダメです。まずはシリコンオフを使って粘着剤を軟化させ、スクレーパーで掻き集めるようにして除去します。
この車両は、ほとんど新車の状態に近く、粘着剤の固着もないし水垢やカルキの堆積もなかったので、シリコンオフだけで比較的簡単に粘着剤を剥がすことができました。塗装面に最後に残った粘着剤の跡は、シリコンオフかイソプロピルアルコールを湿らせた布(=3MのPACクリーナーの主成分はイソプロピルアルコールです)で、優しく擦って拭き取ります。
粘着剤が汚れやカルキと一体になって固まっている場合は、シリコンオフではなかなか溶けず、除去できない場合もあります。ウェスなどでしつこく擦っていると、やっているうちに無意識に擦る力が強くなってきて傷になるリスクが増すので、どうしても除去しづらい場合は(車両の塗装に修復歴がなければ)思い切ってラッカー薄め液(=ラッカーシンナー:シリコンオフよりも溶解力の高い溶剤です)を使った方が良い場合もあります。そのあたりの判断は状態によってケースバイケースです。
ネバネバを完全に除去した、もしくはこれ以上綺麗にするのは無理、という状態になったら、4Ringsの形の養生テープを剥がします。この車は異例に綺麗で状態が良いので、作業紹介の事例としてはむしろ不向きで、できれば平均程度に汚れた車両の方が分かり易かったのですが、文章で補足します。どうなるかと言うと、養生テープを剥がすと、大抵の場合は4Ringsの形が再びクッキリと浮かび上がります(笑)。
輪のエッジに沿って水垢がこびりつき、さらに水垢の縁には除去しきれなかった粘着剤が、白っぽく固形化して残っています。ここに4Ringsがありました、と明瞭にわかるくらいに痕が残っている状態が普通です(繰り返しですが、この車両の綺麗さは異例です)。長方形の枠の中全体をシリコンオフで再度全体的に拭き取りますが、普通はそれでも4Ringsの痕が消えません。ここで、あまり頑張ってシリコンオフで強く拭かない方が良いです。それをすると塗装面が傷っぽくなり易いからです。
残った痕はコンパウンドで磨いて綺麗にしますが、4Ringsの外周は長方形のマスキングテープに接しています。そのままコンパウンドを使うとマスキングテープの痕がボディ面に残ってしまうので、マスキングテープを一旦剥がす必要があります。位置のマークが分からなくならないように、長方形のテープの外側にピッタリ合わせてもう一周テープで囲ってから、内側のテープを剥がします。このとき、位置決めが不正確にならないよう、テープとテープの縁が0で接するように、+0.1mmでも−0.1mmでもなく正確に0に貼る必要があります。
内側のテープを剥がしたら、4Ringsの痕は長方形の枠からはテープ幅だけ離れた内側になっていますので、それが綺麗に消えるまで9800番の極際目コンパウンドで鏡面に磨いていきます。この車両はコンパウンドを掛ける必要がないくらい、ほんの軽く磨いただけで完全に綺麗になりましたが、通常はこうはいきません。綺麗に磨くコツは、コンパウンドを一度塗ったら、そのコンパウンドの粒が砕けて細かくなるまで途中でコンパウンドを追加せずに磨くこと。磨く際の圧力は強すぎず弱すぎず、どちらかというと始めの方やや強めで、後半に擦る抵抗感が増して来たら、その抵抗感が増さずに一定になるくらいに押しつけ圧の方を少しずつ弱めながら磨きあげることです。
痕が極端にクッキリ残っている場合は、完全に綺麗になるまでコンパウンドで磨かない方が良いケースもあります。4Ringsの縁の形に塗装面が浸食されている場合もあり、その場合は完全に痕が見えなくなるまで磨いてしまうと磨き過ぎになります。止め処はというと、このあとブラックエンブレムを貼った際に隠れる位置は、痕が残っても問題ありません。4Ringsの外形よりも外側に位置する水垢などは、完全に除去しておかないと完成後に見えてしまいます。エンブレムを装着したあとからではクリーニングできないので「完成時に隠れないところが綺麗になるまで」磨きます。
一回り大きな枠内を綺麗にしたら、その内側にマスキングテープを再度貼り、もともとのマーキングの位置を再現します。このときも、0.1mmと違わぬ完全な0でテープを貼る必要があります。言葉の説明では難しそうですが、0で隣接させてテープを貼るのはやってみるとさほど難しくありません。枠をマーキングしたら、エンブレムに剥離紙(台紙)を着けたままボディに宛がって、貼付け面の湾曲が合っているか確認します。
4Ringsのエンブレムは、車種およびフロント用、リア用でそれぞれ専用のパーツになっており、サイズが違う場合もありますが、サイズが同じで別々の専用品の場合は貼付け面の湾曲が異なります。フロント用とリア用を同時に購入した場合など、取り違えて逆に貼ってしまうと大変ですので、袋の品番でも確認しますが、念のため現物をボディに当てて、湾曲がきちんとフィットするか確認してから貼るのがいちばん確実です。
貼付けは、裏面の剥離紙を全部剥がして、両手の指先でしっかり持って、ボディ面と並行に数mmの距離まで近づけます。人差し指と親指の先端の腹の部分でエンブレムを持ち、その指先をボディ面にしっかり押し当てて安定させます。腕の力で空中に支えているのではフラフラして全く安定しないので、必ず4本の指先をボディに当てて安定させる必要があります。その際、エンブレムを落とさないように注意してください。
ボディ面から数mm離れた状態で安定したら、ボディ面を垂直に見る視点に目(頭)を移動しながら、4Ringsの要所、具体的には左の輪の9時、6時、12時、右の輪の3時、6時、12時、中2つの輪の6時、12時の位置が、マスキングテープのエッジとピッタリになっているかを順次確認します。全体を一度に確認することは不可能なので、頭の位置を動かしながら、それぞれ垂直の視点から確認し、ズレがあればボディに接した指を微妙にズラして修正します。
完全に位置が合ったら、最後の数mmをボディ面に降ろして貼りますが、その際全体を並行に降ろしていくことはできません。それをやろうとするとエンブレムを落としてしまうか、最後のところで思わぬ位置に貼りついてしまうので、駄目です。4本の指のどれか1つの最初にボディ面に降ろします。経験的には右手の親指がやり易いです。右手の親指の場合、左手の2本の指をできるだけ動かさないように安定させたまま、右の輪の3時と6時の位置を交互に確認しながらゆっくりボディ面に降ろします。
右の輪の一部がボディに接すると、その個所が粘着しますので、その時点で右手の2本の指を離して位置ズレがないかを良く確認します。この時点なら0.5mmくらいまでなら動かしたい方向に軽く押すことで修正が効きます。あとは他の各部分も良く確認しながら左手の方も塗装面に降ろしていき、全体を粘着させます。ピッタリ0に、つまり完全に正確に貼りますと、このようにアップ写真にも耐えます。3時、6時、9時、12時が全てちょうどピッタリ位置決めのマスキングテープのエッジに接しています。
あとは、良く押しつけて定着させる必要があります。ブラックエンブレムはグロス仕上げなので手指等でゴシゴシ触ると傷っぽくなります。なので、お客様の車両に施工する場合はマスカーで養生をしてその上から押さえます。ヘアドライヤーで熱を掛けつつ抑えることで、より完全に定着します。しっかり着いたら、マスカーと位置合わせのマスキングテープを全部剥がし、ボディ面の指紋やテープ類の跡をスピードシャイン等でクリーニングして完成です。
っと、今回はやや必要以上に丁寧に解説してみました。maniacs STADIUMでは実際この工程で作業していますが、ご自身で施工される場合はここまでちゃんとやらなくても、フムフムと思ったところだけでも参考にしていただければ、良い感じで貼れると思います。やはりブラックエンブレムは、グッとスポーティになりますね。
Audi 4Ringsエンブレム各種(商品ページ)
この施工例は、TTです。ノーマル状態ではクロームメッキの4Ringsエンブレムが装着されています。ブラックに換装する場合、もともと装着されているメッキの4Ringsと寸分違わぬ位置に貼ることが基本です。なので、作業の最初にまずノーマルのエンブレムの外形をマスキングテープで囲って位置をマークします。
その際、テープの幅の端が正確にエンブレムの外周とゼロゼロになるように貼ります。エンブレムはボディの塗装面から僅かに浮いていますので、テープを寄せすぎるとエンブレムの下に滑り込んでしまいます。テープをエンブレムの縁に当てるのではなくて、真正面(=塗装面の鉛直方向)から見てゼロになるように正確に貼ってください。
エンブレムの外形に合わせて長方形にテープを貼ったら、念のためボディパネルの縁からの距離を正確に測って、ノーマルのエンブレムが曲がっていないか確認します。ノーマルの時点で傾いて装着されている場合も稀にあるので、その場合はノーマルと同じく傾けて装着する必要はなく、この貼り替えが傾きを修正する絶好のチャンスです。
修正する場合は、修正分を見込んだ位置にテープを貼り直しますが、この車両はピッタリまっすぐでしたので、ノーマルの位置のとおりを踏襲すればOKです。位置決め外枠長方形を決めたら、エンブレムだけを残してボディ面をマスキングします。これは傷防止の養生のためなので、エンブレムの外形(縁)が微妙に浮いている下にまですべり込ませて、できるだけ内々まで貼り込みます。
マスキングを完了したら、ノーマルのエンブレムを取り外します。糸で切り取る方法もありますが、Audiのエンブレムにはその方法が不向きです。理由は、通常の(他メーカの車両の)エンブレムは両面テープの厚み分だけボディ面から浮いて装着されている場合が多いのに対して、Audiのエンブレムは両面テープの厚みをエンブレムの裏面形状で吸収して、エンブレムの周囲とボディ塗装面との隙間が非常に僅かしかないからです(糸1本の太さの隙間がありません)。
そのため、テグス(=釣り糸、撚りのないナイロン糸)ではうまく切れませんし、撚りのあるナイロン糸等を使うとボディ面にほぼ必ず傷がついてしまいます。Audiのエンブレムを剥がすのには、プラスチックスクレーパーを使いますが、スクレーパーの先に厚みがあるとエンブレムとボディの僅かの隙間に入らないので、まずスクレーパーの先端を薄く研ぐように削り、鋭利にします。ここではベルトサンダーを使っていますが、サンドペーパーでも大丈夫です。
先端を研いだプラスチックスクレーパーをエンブレムとボディ面のマスキングテープの間に差し入れます。最初はスクレーパーの刃幅の真ん中辺りから差し入れるのが入れ易く、きっかけができたら刃先の尖った部分を使うようにします。先端が4Ringsの輪の内側に突き出す際は、その先端が輪の中のマスキングテープの下に潜り込まないように、必ずテープの上に出てくるようにします。
そのまま両面テープのスポンジの厚みの中を切り進む感じで、4Rings全体の外周をぐるっと回っていきます。コツとしてはできるだけスクレーパーの薄い先端だけを使って両面テープの基材(スポンジ状の厚みのある部分)を切るようにし、スクレーパーの手元側、厚みのある部分まで差し込まないようにします。また、スクレーパーは基本的にボディ面に接するように沿わせて、面と並行に使い、面に対して浮かすような角度をつけないことです。
この段階ではテープを切ることが目的なので、くれぐれもエンブレムを引き剥がす方向にコジッたりしてはいけません。先に、4Rings全体の外周をぐるっと一周全部切り終えてから、中ほど3個所の輪と輪が交わったた部分の両面テープを切ります。その際は、どうしてもスクレーパーの手元側、厚みのある部分がエンブレムとボディの間に差し込まれることになりますが、極力エンブレムを浮かさないように、コジって剥がす方向の力が掛らないように注意します。
理由は、エンブレムをコジって剥がすような力が掛かると、引き剥がされるのと反対側が反力でボディ面に強く当たり、ボディのその部分に傷が入ってしまいます。両面テープは引き剥がして取るのではなくて、厚みの真ん中辺で切るもの、と考えるのが正解です。輪の重なり部分3個所を、スクレーパーの先端で慎重に切ると、最後は全く力を入れなくてもエンブレムがそっと外れてきます。
エンブレムの裏面は、左写真のような感じでラダー状になっており、ラダー状の貼付面の高さは周囲よ一段低い凹状になっています。その段差の中に両面テープの厚みを吸収して、装着状態ではメッキエンブレムの縁があたかもボディ面にピッタリ密着しているような装着状態になっているのです。細かいことまで気を使って非常に行き届いた設計、さすがはAudiです。
車両によってはエンブレムの下に泥汚れや細かな砂粒が詰まっていたりします。この車両の場合はとてもに綺麗な状態でしたが、こんなに綺麗な状態の車両は珍しいです。大抵の車両では、両面テープの縁に土埃のような汚れが溜まっています。汚れている場合はこの段階で一旦濡れ雑巾等で良く拭いて、水溶性の汚れをできる限り除去してから次の工程に進みます。汚れたまま作業するとボディに傷をつける原因になります。
プラスチックスクレーパーは最初に刃先を薄く研いで使ったため、ここまでの工程で大抵は多少の刃こぼれになっています。刃こぼれ分をハサミ等で切って短くして研ぎ直します。次の作業では、スクレーパーの先端に多少強度があった方が使い易いので、さっきよりは若干厚めに研いであります。そのスクレーパーの刃の端の方を上手く使って、ボディ面に残った両面テープのスポンジ基材を剥がしていきます。
この時点では、まだ溶剤を使ってはいけません。ドライで剥がすのは地道で手間が掛りますが、それでもできる限りギリギリまでドライで剥がした方が着実に作業が進み、周囲がぐちゃぐちゃに汚れて嫌な気分になったりせずに、最終的には全体の手間も少なく済むと思います。この段階では粘着剤のネバネバはボディ面に残っても良いので、まずスポンジ基材を残らず全部除去するようにします。今の季節は温度の問題はありませんが、冬場に硬くて作業が捗らない場合はヘアドライヤー等で温めながらスクレーパーで削ぐと、やり易いです。
4Ringsの4つの輪のスポンジを全部綺麗にこそぎ落とすには、結構な根気が要ります。端から丹念にやっても良いですが、飽きてしまった場合はやり易そうなところからやるでも良いです。ポイントは、今自分がどの個所のどのスポンジを除去しようとしているのか、きちんと自覚的に狙いを定めてスクレーパーを使うことです。
だんだん気持ちが散漫になってくると、なんとなくその辺りを全体的にガーっと一気にこそげないかなぁ、などと狙いのハッキリしない漫然としたスクレーパーの使い方になり易いです。横着、ガサツ、ずぼらは、この作業には大敵です。剥がしたカスはそのまま下に落とすと、バンパーにあたりを汚したり、床に散らかすと履物の裏にくっついたりして始末に悪いので、すぐ脇に裏返した養生テープを貼って回収していきます。単調な作業ですが、回収したカスが溜まると成果物のようで多少の励みにもなります。
両面テープのスポンジ基材を全部除去したら、残った粘着剤のネバネバも同様にスクレーパーでこそいで、可能な限り除去していきます。ネバネバにある程度厚みがある個所は、削ぐようにして除去できます。スポンジを剥がしたのと同じように、地道に、単年に、根気強く剥がしていきます。
このへんで、もうそろそろ溶剤で溶かして一気に取りたい気分になりますが、粘着剤がまだたくさん残っている段階で溶剤で溶かしてしまうと、ネバネバが生き返って尚のことネバネバだらけになり本当に始末に悪いので、ここは辛抱強く頑張った方が良いです。
もうこれ以上は削ぎ取ることが無理、という段階まで来てから、始めて溶剤を使います。使える可能性のある溶剤は、大雑把に言って3通りあります。99工房のシリコンオフは、石油系でペイント薄め液とほぼ同じです。これが一番安全に使えるので、お奨めです。脱脂用のイソプロピルアルコールも粘着剤剥がしに使えますが、ボディの塗装を膨潤させるのでアルコールは直接吹き掛けてはダメです。まずはシリコンオフを使って粘着剤を軟化させ、スクレーパーで掻き集めるようにして除去します。
この車両は、ほとんど新車の状態に近く、粘着剤の固着もないし水垢やカルキの堆積もなかったので、シリコンオフだけで比較的簡単に粘着剤を剥がすことができました。塗装面に最後に残った粘着剤の跡は、シリコンオフかイソプロピルアルコールを湿らせた布(=3MのPACクリーナーの主成分はイソプロピルアルコールです)で、優しく擦って拭き取ります。
粘着剤が汚れやカルキと一体になって固まっている場合は、シリコンオフではなかなか溶けず、除去できない場合もあります。ウェスなどでしつこく擦っていると、やっているうちに無意識に擦る力が強くなってきて傷になるリスクが増すので、どうしても除去しづらい場合は(車両の塗装に修復歴がなければ)思い切ってラッカー薄め液(=ラッカーシンナー:シリコンオフよりも溶解力の高い溶剤です)を使った方が良い場合もあります。そのあたりの判断は状態によってケースバイケースです。
ネバネバを完全に除去した、もしくはこれ以上綺麗にするのは無理、という状態になったら、4Ringsの形の養生テープを剥がします。この車は異例に綺麗で状態が良いので、作業紹介の事例としてはむしろ不向きで、できれば平均程度に汚れた車両の方が分かり易かったのですが、文章で補足します。どうなるかと言うと、養生テープを剥がすと、大抵の場合は4Ringsの形が再びクッキリと浮かび上がります(笑)。
輪のエッジに沿って水垢がこびりつき、さらに水垢の縁には除去しきれなかった粘着剤が、白っぽく固形化して残っています。ここに4Ringsがありました、と明瞭にわかるくらいに痕が残っている状態が普通です(繰り返しですが、この車両の綺麗さは異例です)。長方形の枠の中全体をシリコンオフで再度全体的に拭き取りますが、普通はそれでも4Ringsの痕が消えません。ここで、あまり頑張ってシリコンオフで強く拭かない方が良いです。それをすると塗装面が傷っぽくなり易いからです。
残った痕はコンパウンドで磨いて綺麗にしますが、4Ringsの外周は長方形のマスキングテープに接しています。そのままコンパウンドを使うとマスキングテープの痕がボディ面に残ってしまうので、マスキングテープを一旦剥がす必要があります。位置のマークが分からなくならないように、長方形のテープの外側にピッタリ合わせてもう一周テープで囲ってから、内側のテープを剥がします。このとき、位置決めが不正確にならないよう、テープとテープの縁が0で接するように、+0.1mmでも−0.1mmでもなく正確に0に貼る必要があります。
内側のテープを剥がしたら、4Ringsの痕は長方形の枠からはテープ幅だけ離れた内側になっていますので、それが綺麗に消えるまで9800番の極際目コンパウンドで鏡面に磨いていきます。この車両はコンパウンドを掛ける必要がないくらい、ほんの軽く磨いただけで完全に綺麗になりましたが、通常はこうはいきません。綺麗に磨くコツは、コンパウンドを一度塗ったら、そのコンパウンドの粒が砕けて細かくなるまで途中でコンパウンドを追加せずに磨くこと。磨く際の圧力は強すぎず弱すぎず、どちらかというと始めの方やや強めで、後半に擦る抵抗感が増して来たら、その抵抗感が増さずに一定になるくらいに押しつけ圧の方を少しずつ弱めながら磨きあげることです。
痕が極端にクッキリ残っている場合は、完全に綺麗になるまでコンパウンドで磨かない方が良いケースもあります。4Ringsの縁の形に塗装面が浸食されている場合もあり、その場合は完全に痕が見えなくなるまで磨いてしまうと磨き過ぎになります。止め処はというと、このあとブラックエンブレムを貼った際に隠れる位置は、痕が残っても問題ありません。4Ringsの外形よりも外側に位置する水垢などは、完全に除去しておかないと完成後に見えてしまいます。エンブレムを装着したあとからではクリーニングできないので「完成時に隠れないところが綺麗になるまで」磨きます。
一回り大きな枠内を綺麗にしたら、その内側にマスキングテープを再度貼り、もともとのマーキングの位置を再現します。このときも、0.1mmと違わぬ完全な0でテープを貼る必要があります。言葉の説明では難しそうですが、0で隣接させてテープを貼るのはやってみるとさほど難しくありません。枠をマーキングしたら、エンブレムに剥離紙(台紙)を着けたままボディに宛がって、貼付け面の湾曲が合っているか確認します。
4Ringsのエンブレムは、車種およびフロント用、リア用でそれぞれ専用のパーツになっており、サイズが違う場合もありますが、サイズが同じで別々の専用品の場合は貼付け面の湾曲が異なります。フロント用とリア用を同時に購入した場合など、取り違えて逆に貼ってしまうと大変ですので、袋の品番でも確認しますが、念のため現物をボディに当てて、湾曲がきちんとフィットするか確認してから貼るのがいちばん確実です。
貼付けは、裏面の剥離紙を全部剥がして、両手の指先でしっかり持って、ボディ面と並行に数mmの距離まで近づけます。人差し指と親指の先端の腹の部分でエンブレムを持ち、その指先をボディ面にしっかり押し当てて安定させます。腕の力で空中に支えているのではフラフラして全く安定しないので、必ず4本の指先をボディに当てて安定させる必要があります。その際、エンブレムを落とさないように注意してください。
ボディ面から数mm離れた状態で安定したら、ボディ面を垂直に見る視点に目(頭)を移動しながら、4Ringsの要所、具体的には左の輪の9時、6時、12時、右の輪の3時、6時、12時、中2つの輪の6時、12時の位置が、マスキングテープのエッジとピッタリになっているかを順次確認します。全体を一度に確認することは不可能なので、頭の位置を動かしながら、それぞれ垂直の視点から確認し、ズレがあればボディに接した指を微妙にズラして修正します。
完全に位置が合ったら、最後の数mmをボディ面に降ろして貼りますが、その際全体を並行に降ろしていくことはできません。それをやろうとするとエンブレムを落としてしまうか、最後のところで思わぬ位置に貼りついてしまうので、駄目です。4本の指のどれか1つの最初にボディ面に降ろします。経験的には右手の親指がやり易いです。右手の親指の場合、左手の2本の指をできるだけ動かさないように安定させたまま、右の輪の3時と6時の位置を交互に確認しながらゆっくりボディ面に降ろします。
右の輪の一部がボディに接すると、その個所が粘着しますので、その時点で右手の2本の指を離して位置ズレがないかを良く確認します。この時点なら0.5mmくらいまでなら動かしたい方向に軽く押すことで修正が効きます。あとは他の各部分も良く確認しながら左手の方も塗装面に降ろしていき、全体を粘着させます。ピッタリ0に、つまり完全に正確に貼りますと、このようにアップ写真にも耐えます。3時、6時、9時、12時が全てちょうどピッタリ位置決めのマスキングテープのエッジに接しています。
あとは、良く押しつけて定着させる必要があります。ブラックエンブレムはグロス仕上げなので手指等でゴシゴシ触ると傷っぽくなります。なので、お客様の車両に施工する場合はマスカーで養生をしてその上から押さえます。ヘアドライヤーで熱を掛けつつ抑えることで、より完全に定着します。しっかり着いたら、マスカーと位置合わせのマスキングテープを全部剥がし、ボディ面の指紋やテープ類の跡をスピードシャイン等でクリーニングして完成です。
っと、今回はやや必要以上に丁寧に解説してみました。maniacs STADIUMでは実際この工程で作業していますが、ご自身で施工される場合はここまでちゃんとやらなくても、フムフムと思ったところだけでも参考にしていただければ、良い感じで貼れると思います。やはりブラックエンブレムは、グッとスポーティになりますね。
Audi 4Ringsエンブレム各種(商品ページ)