工房長です。maniacs Leather key shell、Audi用2種類を発売して、その後の開発記をアップしておりませんでしたが、VW用の発売に向けて開発自体は着々と進めております!(その6)以降の進捗をご紹介します。
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maniacs Leather key shellの特徴はなんと言っても革を立体形状にする「しぼり」です。この美しいしぼり加工は、革茶屋さんならではの高度な技術と経験によるものです。ノウハウですので詳細はご紹介できないのですが、しぼりの型は革茶屋の荻原社長の手作りによるものです(まさに、ノウハウの固まり)。

しかしここで、若干問題が・・・。革のしぼり加工は丸一日以上の時間がかかるため、型がひとつでは週に5個くらいしか製品ができません。さらに、この型をベビーローテーションで使っていると型にクラックが入って割れてしまうことがあります。型は試作と調整を繰り返した手作りのワンオフなので、複製または作り直すには手間と時間が掛り、かつ全く同じに作ることが難しいのです。
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そこで、maniacsで技術協力させていただくことにしました。手作りで、いままで唯一無二だったしぼり型を、三次元測定とCAD/CAM技術によりデータ化して、もし壊れても正確に再現できるようにしようと。革茶屋さんのノウハウとmaniacsのCAD/CAMの融合です。まずはメールのやりとりで粗検討のあと、みんなで集まってF2Fでミーティング。

それぞれの得意な技術を融合させていくのは、やり甲斐があって楽しい仕事です。とはいえ、手作りの微妙なノウハウを如何にしてデジタルにデータ化するか、とても難しい擦り合わせでもあります。アイディアを出し合い、微に入り細に入り確認を行い、この初回F2Fミーティングは7時間に及びました(笑)。具体的な内容は書けないので、画像で雰囲気を察してください。
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今回CAD/CAM化の第一の目的は、手作りのしぼり型をCAMで正確に再現することです。既に商品化しているAudi用2種類について、その手作りのしぼり型、キーの現物、それらを元にデジタル化したCADデータを詳細に検証した上で、CAMで複製型を作りました。そのCAM製の型で早速試作。下に写真を掲載しますが、手作り型の絶妙なフィット感とテイストをスポイルせずに、職人技のあたたか味が上手く再現できました。

手作り型の複製を成功させた上で、それを踏まえた第二の目的として、実はVW用のmaniacs Leather key shellは、キー自体の測定データから直接CAD/CAMで型を作ろうというプランなのです。手作りの型を経ずに、型づくりの全ての微調整をCAD上で行おうと。maniacsで商品のデザインと仕様を出すだけでなく、物づくりの面でも技術協力することで、革茶屋さんとより深いコラボレーションになり更に価値ある製品になるという期待です。
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具体的に、今回VW用のmaniacs Leather key shellは、Golf7/7.5等のキー用と、Arteon等のキー用の2種類を開発します。優美な高級感のAudi用キーと比較すると、VW用のキーはキー自体がカチッとしたシャープな面構成のデザインです。Leather key shellもこのカッチリ感を表現したい、それには「CAD/CAMこそが適している」という読みです。

つまり、求める製品のテイストを明確にして、それを実現するために開発のプロセスをデジタル化する試み。達人の荻原さんから何と言われてしまうのかドキドキしながら提案しましたが、荻原さんもこの初挑戦を「前から試してみたかったこと」「とても楽しみ」と仰ってくださり、経験とノウハウをCADデータに落とし込むことに、惜しみなく全面的に協力してくださいました。

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併せて、型の材質と構造にもmaniacsらしいアイディアを採用していただきました。成形の精度をさらに高め、型の耐久性を向上させる目的です。詳細は割愛しますが、雰囲気が分かる図解を掲載します。レビューを重ねて仮決定したCADのデータは、型に作る前に3Dプリンターで格子状に成形して、現物に宛がってクリアランスのバランスを最終確認しました。念には念を。

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そして、キーから直接CAD/CAMで作ったVWキー用しぼり型の1号機が完成。型の詳細な写真は掲載できないのですが、手作りのノウハウとCAD/CAM技術が融合した型は、それ自体とても美しく、ある種の迫力が感じられます。革茶屋さんでは同じCADデータから革の外形をカットする切断型を作っていただき、そのしぼり型と切断型を使って早速Leather key shellを試作。そして、この開発をスタートした最初のイメージサンプルと並べてみました。

最初のもの(左)はあくまでイメージサンプルで今回の(右)は製品化直前の段階ですし、使っている革も違います(左:栃木レザー、右:リオダブルバット)。同列に比較するのはアンフェアなのでその分は差し引いて見る必要がありますが、それらを差し引いても「開発プロセスをCAD/CAM化することで革製品の印象をシャープにする」という目論見は、イイ感じに達成できたんじゃないかと感じます。
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左はCAM製作のスペアのしぼり型で試作したAudi用。技と手間暇を惜しみなくつぎ込んだ手づくり型の良さ、Audiに相応しい高級感がしっかりと継承されています。右はVW用のブッテーロでの試作。Audi用の優美な高級感と微妙に異なる、ちゃんとVWキーらしいカチッとしてスッキリしたテイストになっていると思いませんか。

試作品の出来映えは次の開発記で詳しく説明します。そこから製品化に向けて細かな点を妥協なく詰めて、二次試作、三次試作へと進んでおりますので、発売までもう少々お待ちください。