工房長です。前回のGolf7用maniacsパドルエクステンション開発記(1)で、クレイモックアップを完成したところまでお伝えしました。その続報です。

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開発記(1)の後VW/Audi専門誌にて露出しましたが、製品イメージと装着イメージはこんな感じです。この画質レベルで公開するのは今回が初めてです(画像はモックアップの3Dデータをコックピットの実写と合成したCG)。ステアリングスポークの形状に溶け込むようにマッチする曲線美、コックピット全体のデザインを一層引き立てる立体的な奥行き感。maniacsのオリジナル商品は、「まるで純正のような出来栄え」「ノーマル以上に自然な雰囲気」といった形容を頂戴することが多いですが、この商品もまさにそうした開発コンセプトを高いレベルで具現化できたと思います。

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さて、この装着イメージ画像ですが、実はクレイモックアップそのものなのです。モックアップを精密な三次元測定器でデータ化して、それに画像処理でバーチャルに着色してイメージ画像を作りました。なので、製品レベルの試作品があるわけでもなく、CADデータも未だない状態です。ここからクレイの形状を再現するようにCAD上で面を構成していく作業が必要です。クレイモックアップは手作りなので、その微妙な形状の歪みやディメンジョンのズレがあり、それを補正しながらCAD上で綺麗な面に置き換えます。右図は実測データとCAD上に構成した形状データを重ねて比較しているところです。

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CADデータ化が完了したら、それをプラスチックで切削して試作します。この種の試作には3Dプリンターが最近普及しましたが、今回は材質感を含めてできるだけ詳細に確認したかったので切削を選びました。でき上がった一次試作品を、さっそく確認していきます。まずはディメンジョンの正確な確認。名刺で簡易ジグを作って測定しますが、この方法が意外に正確です。それから車両に装着して操作性を評価します。概ね狙い通りの操作感です。maniacsは操作性への拘りでも定評を戴いており、妥協できないところです。クレイモックアップとも比較しながら課題点や対応案を書き出していきます。

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今回が一次試作ということもあり、設計の修正は多岐に渡りました。まずディメンジョンは、奥行き方向で1.8mm、円弧方向で1.2〜2.5mmの調整が必要だと分かりました。クレイモックアップをCADデータ化する際に行った調整が、結果的にかなりのオーバーで戻す必要があります。実はクレイが意外と正確にできていたということです。それから装着部のフィッティングの調整、外観デザインもクレイから調整した部分が結果的に微妙にイメージが違ってしまい、戻す方向にデータを修正します。曲面形状は、Rの変化率がほんのちょっと違うだけで印象がガラリと変わるので、難しいです。

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それから、曲面と曲面の繋ぎ目のラインがデザインの意図通りになるように整えます。クレイモックアップは手作りなので繋ぎ目の微妙なところは自然と誤魔化しが効いて辻褄が合ってしまうのですが、CAD上で歪みのない精密な曲面を描くと、面と面の繋ぎ目のラインが結果的に意図とズレてきてしまうことがあるのです。繋ぎ目のラインはデザイン上でとても重要な要素ですので、面構成の辻褄を保ちながら調整を掛けていきます。これが意外と大変な作業です。それから裏面は試作時にはプレーンなデザインでしたが、ディメンジョン上の捩れが自然に見えるよう、デザインを加えることにしました。

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CADデータを修正して、それをディスプレイ上でじっくり確認して、さらに調整を掛けるというプロセスを何度か繰り返して、完成度を高めていきます。見た目のバランスだけの問題なので、大雑把に「こんなもんかな」と思ってしまえば、もう十分に完成と言っても良いのですが、この立体形状に対しての確固たる理想のイメージがあったので、それに向けてCAD上の形状との乖離を極限までゼロにしていきました。裏面のデザインについては、Golf7の外装からデザイン要素を引用していますが、安易に真似をするのではなく、細部の辻褄に拘った繊細なレイアウトを行っています。

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そして、ようやく外形デザインを確定。パーフェクトを自負できるレベルまで詰められたと思います。これはもう「自信作」と言ってしまいましょう。上のCADの絵と比較すると違いが・・・パッと見には殆んど分かりませんね(笑)。でも、この「拘り」「詰め」が大切なんです。っで、製品化に向けての今後の開発ステップはと申しますと、この段階ではCAD上の形状はソリッドなので、ここから内部構造の検討を行います。操作感を決定づける重要な要素であるイナーシャ(慣性重量)も設計に盛り込みます。現在、内部構造の設計を急ピッチで進めており、一日でも早くリリースできるよう頑張ります。(つづく