工房長です。大好評のRight Side FootPlate for Golf7、発売が先行しましたが、あらためて開発記をご紹介します。このフットプレートはm+ブランドで高い評価を得ているm+ Right Side FootPlate for Volkswagen(Golf5,6系に適合)の第二弾として、Golf7用に企画したものです。下左写真は、その開発初期のもので、当初車両への装着構造はGolf5,6系用のものと同様に、車両のキックパネルに直接ネジ止めするかたちになっていました。

しかし、このGolf7用は車両のキックパネルとステンレスプレートの間にゴムを挟む必要があるため、一筋縄ではいかないのです。この構造では、ステンレスプレート自体の幅を確保できず、ネジとネジとの間が浮いてしまいがちです。かといってネジを締めすぎるとゴムの弾性によりステンレスプレートが歪んでしまう、という課題を抱えていました。そこで、Golf5,6用の装着マニュアルを書かせていただいた繋がりで、工房長が助っ人することに相成りました。

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開発期間も短いため、さっそく設計検討です。実は、Golf5,6用の装着作業を何度かやった経験から、大雑把な目途は頭の中にありました。そして、往年の杵柄で、今回は工房長自らCADで図面を引くことに。設計のポイントは、主に以下の7項目です。

1) 全体の剛性を高めて、ガッシリとした踏み応えを作り込むこと。
2) Golf7のキックパネルは幅狭なので、その幅の不足を補って踏み易くすること。
3) 踏面の高さは適度に抑えて、アクセルペダルとの高さ関係を最適にすること。
4) 車両のキックパネルを脱着や穴開け加工せずに、オーナーさまご自身で簡単に装着できること。
5) 踏面にはネジやリベットを出さずに、スッキリしたデザインにすること。
6) 軽量で、かつシンプルな構成であること。
7) ラバーとステンレスのハイブリッド構造で純正ライクな出来栄えとし、ステンレスプレートにプレスライン(段差)を入れて純正ペダルとの意匠の統一感を出すこと。

互いに相反する要件を含んでいて、それを実際のひとつの製品に具現化するのは難しかったですが、設計は思った以上に的中して、試作1回目で90%くらいまで詰めることができました。ちなみに、工房長が引き受けた時点で、すでにラバー部品は金型が完了していて、寸法変更ができないという制約条件付きでしたが、そんな足かせも逆手に取るように活かして、ほぼベストなバランスに設計できたと思います(自賛)。あとは隅々の細かい部分の寸法を微調整して、試作2回目です。

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試作2回目の評価で、完全にバッチリ装着できました。このままでも製品化できるレベルです。上中の画像はフットプレートの横断面の検討図です。厚みを最小限に抑えた中で、要所を押さえて剛性を確保するための曲げを入れている設計方針が分かると思います。左側面の曲げはフットプレート全体に高い強度を与えています。上部の引っ掛け構造はシンプルでありながら装着時にテコの原理でグイっと締まる構造になっていて、しっかり固定できます。

試作2回目からさらに細部の微調整を行って、いよいよ製品版の設計が完了しました。製造については、今回は精密汎用板金という技術を用いています。もちろん、それを前提として、その利点を活かしきる設計をしています。maniacsで商品化して好評のmaniacs AB pedal Contactive Metal Topはプレス板金(しぼり)という技術で製造していますが、それとは少しジャンルの異なる製造技術です。ご参考に、

プレス板金(しぼり)とはこんな感じ
精密汎用板金とはこんな感じ
(注:YOUTUBEで探した技術動画であり、実際の本品の製造工場の工程ではありません)

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そして要になるのが、下端の固定構造です。珍妙な形のブラケットを中写真のようにキックパネルとフロアカーペットの隙間に深く差し込んで固定する、独特の構造です。このブラケットの形状が実に微妙で難しいのです。3次元的に角度が付いているので、ピタッと装着できる形状にするのにCAD上で少し苦労しましたが、ここはCADで苦労しただけあって試作の時点で思惑通りしっかりと装着できました。

横から見ると単純にV曲げを入れただけのブラケットで、トッププレートの下端も無造作に鈍角に少し曲がっているように見えますが、この角度と寸法がキモなのです。装着時にネジを締めていくと微妙にブラケットを引っ張り込んで、上部の引っ掛けと同様にこちらもキックプレートに対してグイっと締まるディメンジョンになっています。こうした要件をシンプルな設計の中に確実に織り込むことによって、簡単に装着できてしっかりと固定できる構造を実現しています。

今回、とてもシンプルな構成の商品ですが、その設計思想について少し語ってみました。ネジ頭の形状ひとつ、ばか穴の直径ひとつとっても、作業性や固定強度へのこだわりがあります。しかし、実際にはユーザー様はそんな設計のこだわりなんかは何も感じなくても、当たり前のように普通に装着できて、あたかも最初から当然そうだったように違和感なく使用していただけるのが、製品として一番目指す処だと思っています。「着いてて当たり前に思えるパーツ」それが究極の設計思想かもしれません。

m+ Right Side FootPlate for Golf7(商品ページ)