工房長です。maniasc Blogに「エンジンオイルレベル確認方法と補充方法」という記事があり、ちょうど2年前に掲載したのですが、それ以来ずっと人気記事上位に君臨しています。なんとかそれを超える人気記事を書こうと頑張るのですが、不死鳥のようにしつこく上位に食い込み続ける、恐ろしい人気記事です(笑)。
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公認サポーターのじぇいさんが執筆して、わたくしが要所を補足した記事で、自分で言うのもなんですが、たしかにベーシックなことを丁寧かつ正確に書いてある良い記事です(笑)。「それにしても」と思ってちょっとサーチしてみましたら、Yahoo知恵袋などからもリンクされていたり、国産車のオーナーさまも参照してくださってるようで。広く皆様のお役に立てて、嬉しい限りです。

エンジンオイル2













それが、先日じぇいさんからのメールで「気になることが」と書かれていて、VW(ジャパン)公式サイトの「日常点検」のページに、エンジンオイルのレベルは「始動する前のエンジンが冷えた状態で点検してください」と書いてあると。「えっ?」見ると確かにそう書いてあります。maniacsの超人気記事(笑)は車両の取扱説明書に沿って「通常運転時程度の温度にまで温めた状態で」と書いており、まるで真反対です。

とは言え、結論を先に書きますと「一晩停めておいた車のエンジンを掛ける前にオイルレベルを測る」のと、「エンジンを温めてから止めて約5分後にオイルレベルを測る」のとで、結局はほぼ似たような結果が得られます。「温間」で測る方が理屈としては正しいと思いますが、日常点検の目的のためには実際はどちらの方法でも大差なく、自宅の駐車スペースが水平ならば「冷間」の方が面倒が少ない分だけ実用的と言えるかもしれません。

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理由は、以下のようなことです。エンジンを始動すると、オイルはオイルパンからポンプで吸い上げられてエンジン各部に循環します。1~2リットルはエンジン各部を巡っており、オイルパンのオイルレベルはその分だけグッと低くなっています。やがてエンジンが温まるとオイルは膨張して量(=体積)が増えますますが、エンジン回転中は引き続きオイルは各部を巡っていますので、オイルレベルを(点検の目的で)云々できる状態にはありません。

その状態からエンジンを停止して5分くらい安静にすると、各部に回ったオイルの大半がオイルパンに戻ってきます。しかし、複雑な形状のエンジンヘッドや流路内にはそれなりの量のオイルがまだ残っていて、短時間で全部はオイルパンに戻りきれません。何十分も待つのは非能率だし、待ち過ぎたらせっかく温めたオイルがまた冷めてしまうので、だいたいオイルパンに戻れば良いだろう、ということで5分くらいで測ります。この状態が温間でのレベルチェックです。

その状態から一晩を経過すると、エンジン各部に残っていたオイルは時間を掛けてゆっくりと低きに流れ、翌朝には戻れる分はほぼ全てオイルパンに戻っています。その分だけオイルレベルが僅かに上がります。一方で翌朝にはオイルは冷えて膨張の増量分が元に戻り、その分だけレベルが僅かに下がります。これら増分と減分はおおかた相殺するため、温間の安静5分後と結局は似たようなレベルになります。状態は全く異なりますが結果だけ見れば大差なく、2つの測り方の違いはレベルにして1〜2mmだと思います。

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いろいろやって見るとわかりますが、スポーツ走行や高速走行でエンジン全体が高温になった状態から停止して20〜30分くらい経ったときに測ると一番レベルが高くなっています。逆に一番レベルが低いのはエンジンが完全に冷えている状態で始動して30秒くらい空ぶかし等をして、エンジンを停止してすぐ測ればグッと低く出ます(停止して5分後でももかなり低めに出ます)。オイルが低温のまま膨張しておらず、粘度も高くてなかなかオイルパンに戻らないからです。

公式サイトで取扱説明書と異なる記述になっている意図は分からないのですが(じぇいさんが軽くVGJに問い合わせてみましたが、分からず)「より安全に、簡単に、誤差を少なく」という意味では、冷間、つまり朝一の始動前に確認するやり方は実用的かもしれません。理屈は温間の方が正しいのですが、毎回同じ油温に暖機ができなかったり、5分安静と10分安静ではレベルが違って見えたり、温間で測るのは意外と難しいです。maniacsとしてはあえて理屈には拘りませんので、どちらでもお好みの測り方で問題ないと思います。

(2022.12補足追記)冷間でエンジンオイルレベルを確認したり補充する場合の最大の注意事項は、エンジンを一度も掛けずに確認し終わることです。上記でその理由は明らかですが、冷間でオイルレベルを確認する前提として、エンジン停止から8時間なり12時間なり十分な時間が経過していることが必要条件だからです。

よって、一度でもクランキング(セルを回すこと)をした場合は温間の確認方法に切り替える必要があり、やっぱり冷間で確認したいのであれば(エンジンが温まっているか冷えているかの問題ではなく)エンジン停止状態で再度8〜12時間待つ必要があります。冷間と温間の折衷のような、どっちつかずのやり方をしてはいけません。

例えば「停車が水平でないから1mだけ動かして、エンジンが温まらないうちにすぐ切って、冷間で確認しよう」なんてやり方はできません。それをすると、レベルが実際よりもずっと低めに見えます。レベルが低めに見えることは補充し過ぎの原因になり、補充のし過ぎは度を超すと重大な不調や故障の原因にもなるので、注意が必要です。