工房長です。開発記のアップは少し間があいてしまいましたが、maniacs革製キーカバー!の開発は着々と進んでおります。(その2)に続く進捗をご紹介します。(その2)では、革茶屋さんのキーカバーお借りして、創業社長の荻原さんにいろいろな話を教えてもらい、maniacsオリジナルの製品コンセプトを固めて、それを具体的な仕様に書きおろしたところまでご紹介しました。

maniacs革1-11そして早速0次試作です。0次は、サンプルで雰囲気を掴んでいたAudi用ではなく、あえてまだ原型のないVW用のもので作ってみました。革茶屋さん曰く「とりあえずこれで機能性の確認はできると思います、細かいところはまだいろいろと改善の余地があり、これから課題を詰めて一次試作に進みたいです」とのこと。


maniacs革1-25maniacs革1-26






全体を革で覆って表面にキーボタンの窓はなく、カバーの蓋を止めるギボシ(革用のホックのこと)は表から上部に移設、裏面はリベットの出っ張りがなくフラットで、キーボタンは革の上から押す、下部はメッキのボトムキャップまで全て覆って革のループにキーリングを通す構造、といった基本的な仕様を現物で確認できました。形状、機能は、とても良い感じです。
maniacs革1-17maniacs革1-16






縫製は、革茶屋さんも専用の自動ミシンは備えていますが、maniacs向けはミシンを使わずに手縫いで作ってもらっています。革を立体的にしぼっているためミシンに掛らないということもありますが、革茶屋さんならではの手縫いの良さを最大限に取り入れたかったからでもあります。

「平縫い」という縫い方で、丈夫な糸を革の表裏から交互にジグザグに通して、一目ずつしっかりテンションを掛けて縫っていきます。平縫いはベーシックであるがゆえに仕事の善し悪しのハッキリ出る縫い方でもあります。革茶屋さんのは縫い目が美しく揃って、
堅牢かつとても流麗なステッチです。

手仕事ならではの深い味わいが感じられるだけでなく、使い込むうちに万が一糸の1ヶ所が切れるようなことがあっても、ミシン縫いと違って平縫いはそこから次々にほつれてしまうことがありません。革茶屋さんご自身が手縫いに拘る理由のひとつとして、そう教えてくださいました。

maniacs革1-27






物づくりの出来栄えは素晴らしく、形状やデザインの細部はこれから詰めるとして、しかし実は肝心の全体のニュアンスが今一歩しっくりきません。革自体はとても高品質なのですが、求めるテイストと少し違うのです。革茶屋さんに伺うと、この0次試作は「栃木レザー」を使ってあるとのこと。栃木レザーは日本製の革の中でも最高級で、海外からも認められた有名なブランド革です。

一方で、借用していたキャメル色のサンプルは「ブッテーロ」というイタリア製の革です。ブッテーロは、イタリア・トスカーナ州にある「ワルピエ社」という老舗のタンナーが作る革です。植物タンニンなめしの革で、繊維密度が高く独特のハリとコシがあります。表面は滑らかで、豊富なカラーは発色が良く、大人のエレガンスを感じさせる風合いと言われています。
maniacs革1-18






maniacsではこのブッテーロの採用を希望していたのですが、ブッテーロの豊富なカラーバリエーションの中で、黒以外の色は染料による着色なのに、なんと黒だけは染料の着色の上にごく薄く顔料で着色して仕上げてあるのだそうです。そして顔料で着色された革は、しぼり加工に不向き(しぼる際に、素材の伸び縮みに表面の顔料が追従できずヒビ割れ状になってしまう)という制約があるのです。
maniacs革1-29maniacs革1-28






っというわけで、今回なかりの深しぼりなので残念ながらブッテーロの黒は使えません。黒だけ栃木レザーを採用するか、それとも他のイタリアレザーの黒を探すのか。革茶屋さんから専門的なアドバイスや提案をもらいつつ、工房長自身も、そもそも「なめし」とは何か? なぜイタリア製の革が良いのか? ゼロから勉強し直すことになりました。

黒以外についてはブッテーロを採用することにして、その中からmaniacsとしてどのカラーをラインナップするのか選択しました。検討を重ね悩んだ結果、選んだ色はブルーとキャメルの2色。Audi、VWの雰囲気にマッチする高級感と上質感を表現できると思います。そして、それらに合わせてステッチのカラーも選定。

いちばん肝心の黒の革をどうするか、形状やデザインも詰めつつ、maniacsらしいキーカバーを目指して一次試作へと進めていきます! 乞うご期待です!!
(その4)に続く