工房長です。maniacs Blogには「たわごと」というカテゴリーがあるのですが、見ると2017年から「たわごと」が書かれていないことに気づきました。工房長自身は、なんと2014年から書いていませんでした。とはいえ、相変わらず愚にもつかない、好奇心に駆られただけのようなことはいろいろやっていまして、久しぶりに書いてみます。

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VW/Audiを含めた殆どの欧州車は、日本ではハイオク指定になっています。この記事の結論を先に書くと「素直にハイオクを入れましょう」という当たり前の帰着ですので、結論だけ知ればOKの方はこの先を読まなくて大丈夫です(笑)。







日本ではJIS(日本工業規格)で
・レギュラーガソリン  → 89オクタン以上
・ハイオクガソリン   → 96オクタン以上
と規定されており、実際に売られているガソリンは、レギュラーで90〜91オクタン以上、ハイオクで98〜100オクタンくらいです。

一方、欧州のガソリン規格は、例えばドイツでは
・レギュラーガソリン   → 91オクタン以上
・スーパーガソリン    → 95オクタン以上
・スーパープラスガソリン → 98オクタン以上
という3区分になっていて、日本とは区分が異なります。

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VW/Audiの車両は、スーパー(欧州で一般的な、真ん中のランク)を指定していて、オクタン価は95以上必要です。日本でそれに相当するのはハイオクということになり、JIS規格の「96 RON以上」がリッドの裏に書かれています。実際にハイオクを入れるとオクタン価が100くらいあり、ほぼ欧州のスーパープラス相当で、車の要求値95に対して余裕がありすぎて勿体ない、という話が出てきます。確かに正論ではあります。


っということで、自分のGolf2(MY1990)と、バイク2台(YAMAHAとDUCATI)に、実際にレギュラーとハイオクを半混ぜで入れてみました。いきなりデモカーGolf7.5GTIにレギュラーを入れて試さなかったのは、その勇気もなかったですが、なぜわざわざ古い車やバイクで試したのか追々説明します。

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まずGolf2、この時代のVW車は欧州のレギュラー規格でオクタン価91以上の指定です。日本のレギュラー(89以上)では僅かに足りないけど、ハイオクだと余裕ありすぎ。「勿体ない」という言説はおそらくこの時代に多く言われた話です。Golf2には、レギュラー3分の2:ハイオク3分の1くらいの割合で入れてみました。オクタン価は93くらいになっているはずです。結果、僅かに力感が乏しくなったかな?という程度。全く問題なく快調に走ります。

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つぎにYAMAHA YZF-RI 2006。このレシートは実際に入れたときのもので、リットルで半々でなく値段で半々です(笑)。同じ入れ方で2回入れて、ほぼこの混合割合に置き変わりました。オクタン価は94か95くらいになっているはずです。





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・・・ところが、これがかなり酷いことに。低回転でノッキングが発生して、無造作にアクセルを開けたらエンジンを痛めるんじゃないかという危ない感触です。タンクには、91 Minと書かれていて、Golf2と同じように見えますが。





こんなとき頼るのはインターネットですね。
どのガソリンを入れたら良いのか
こちらは名古屋工業大学の先生が書いている、ちゃんと工学に裏付けられた解説です。読み応えのある、素晴らしいページです(勝手にリンク、ちなみにこの先生VW/Audiをずっと乗り継いでらっしゃいます)。そこに殆どの答えが書いてありました。要約しますと、

■レギュラーとハイオクは混ぜちゃ駄目のような言説があるが、混ぜること自体は何ら問題ない。混ぜた場合のオクタン価は元の値のほぼ加重平均になる。

■欧州車はオクタン価が95あれば良いので、日本のハイオク6:レギュラー4で混ぜて使って全く問題ない。VW車で実際に長期間試して大丈夫。

■北米のオクタン価の表示はAKIという規格で表示されるので、日本および欧州のRONという規格の表示と違う。北米の91は日本の97~98相当。

■レギュラーとハイオクは、同じ目方(質量)なら同じ熱量。両者の違いはノッキング(≒自己着火)し易いかどうかだけ。オクタン価が低い方が点火し易いわけではなく、オクタン価が高い方が熱量が多いわけでもなく、正常燃焼すればレギュラーとハイオクで出る力は同じ。

■レギュラーの比重は0.73くらい、ハイオクの比重は0.76くらい。ガソリンスタンドではリットルで量り売りなので、同じリットルを買っても目方はハイオクの方が4%多い。

■商品としてのハイオク(プレミアム)ガソリンは清浄剤などが添加されて、オクタン価の違い以外にも付加価値がつけられている。

というようなことです。Golf2で問題なかったのは半混ぜでもオクタン価が十分に足りていたからで、微妙に力感が減ったのは当時の車はフィードバック制御が緩い(ほとんど行われていない)ためにレギュラーを入れても同じ体積を噴射し、比重差の影響で混合気が実質的に薄くなったのだろうと思われます。

YAMAHAがノッキングしたのは、北米仕様の逆輸入車でオクタン価 91 Minの表示は 日本の97~98相当、半混ぜしたらオクタン価が下回ったせいで間違いないでしょう。こんなにノッキングする状況は、私自身初めて体験しました。慌ててハイオクを継ぎ足しつつ、暫くそーっと走ってなんとか危険な状態を脱しました。

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DUCATI Monster796 2013は欧州車なので、オクタン価95以上の指定です(JISを意識した96とは書かれておらず、そのまま95以上と表記されています)。空冷なので、エンジン温度が上がることを想定してオクタン価95以上の指定は多少の余裕を持っていると思われ、冬場だったこともあり、実際に半々に入れてオクタン価94~95でも全く問題なし。むしろ一発一発の爆発が力強くなった感じもしますが、先のサイトでは「レギュラーの方が点火し易いわけではない」ということで、そういう効果は否定されています。(ってことは、気のせいか)

先のサイトで興味深いのは、同じリットルでハイオクの方が実質4%多く買える、という点です。なので、リットルの単価でハイオクが8%高くても、実質は4%しか値段の差がないのです。知りませんでした。今のVW/Audiにレギュラーを入れる場合、最大でも半混ぜが限度ですので、そうすると全体としては2%しかお得になりません。仮に満タン8,000円入れて160円ですから、半々に入れる(=けっこう面倒くさい)手間賃にもならない感じです。

オクタン価をギリギリまで下げても、点火〜燃焼し易くなる効果はないとのことですし、ハイオクガソリンに添加されている清浄剤の効果なども考えますと、余計なことはしないのが吉。素直にハイオクを入れるのがお奨めという、当たり前すぎて今さら言うまでもない結論です。無理してケチっても最大2%しか得しない、と知ることで気持ち良くハイオクを入れられるようになる記事です、これは

(余談)
ちなみに現代の自動車のエンジンは、ガソリン噴射がフィードバック制御されるので、ガソリンの比重差も補正されて混合気の濃さは一定に保たれ、レギュラーを半混ぜしても全く何の違いも出ないと思われます。ノッキングに至ってはセンサが感知してECUが未然に止めるので、市販のどんなガソリンを入れても、どんな運転をしても、今の車はノッキングは一切(全く)発生しないと思います。例えば、間違えて奥様がレギュラーを満タン入れちゃったとしても、車が補正してくれちゃうので、オーナーである旦那様は何も気付かない、という結果が予想されます(苦笑)。

さらに余談ですが、アンチノック制御は20年以上前から一般化しているので、今ではノッキングを体験したことがないドライバーが殆どだと思います。「ノッキング」という言葉だけは残っていて、カーノッキング(MT車などでエンジンの回転が低すぎると車両またはエンジンマウントがガクガクすること=スナッチングと言う)と混同されるケースが多いです。エンジンのノッキングはそれとは全く別で、ガリガリ、チリチリというような、独特の燃焼音です。2006年式のバイクのような、フィードバック制御のない(O2センサすらない)エンジンはオクタン価が足りないとノッキングがモロに発生して、しっかり体験できました(笑)。

さらにさらに余談ですが、10年以上前の車はアンチノックの制御を掛ける際に、点火進角を暫定的に遅らせて当座のノッキングを止めるだけでしたが、現代の車はECUがノッキングの発生を認識し、再発しないように学習し、記憶してしまうため(エンジンマネジメントのマッピングを書き換えてしまう)、一旦オクタン価不足でノッキングが発生して制御が掛ると、再度ハイオクを入れても元の状態に戻る(再学習をする)までに時間がかかります。その間、最大出力の低下を伴う制御がずっと掛りっ放し、しばらく影響が後を引くことになります(アクセルを床まで踏む機会はあまりないので、それも気付かないうちにいつか元に戻っているという感じかと)。

君子危うきに近寄らず。黙ってハイオクを入れ続けるのが吉です。あぁ、久しぶりで「たわごと」を書き過ぎました。