工房長です。前回Audi用maniacsパドルエクステンション開発記(1)でお知らせしましたAudi用maniacsパドルエクステンション開発のその後の進捗をご紹介します。maniacsのパーツ開発では、二次元CAD、ソリッド系の三次元CAD、サーフェイス系の三次元CADを用途目的によって使い分けますが、今回このAudi用maniacsパドルエクステンションは、繊細で美しい曲面を構成する必要があるので、サーフェース系の三次元CADを全面的に適用しています。

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工房長自身はサーフェース系の三次元CADをオペレートできないので、今回は専門のデザイン・エンジニアと共同作業で開発を進めています。開発記(1)でご紹介したように、モックアップの精密測定データを基に綿密な打ち合わせを行い、あとは今風に遠隔でコミュニケーションを取りながら詳細を詰めていきます。意図や要望は、誤解が生じないようにできるだけ図解でログを残します。ここに上げたのは、その生ログの一例です。目的の形状をCAD上に作り上げるのは簡単ではありません。

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この時点で、最もこだわる必要があるのは、やはり操作性を決めるディメンジョンです。ドライバーが指を掛けるパドルの外周ラインは、ステアリングの握りからどんな位置関係が理想かということについて、maniacsではこれまでの膨大な試行錯誤と経験に基づくノウハウを確立しています。左の図の黄色いラインがその理想のラインです。モックアップを測定した形状をCAD上にそのまま再現して歪みを補正しただけでは、案の定この黄色いラインからは微妙にズレています。

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ズレ量は1〜3mmといったところ。それだけでも操作感は全く違ってしまいます。これが完全に一致するまで形状を変更していくのですが、ディメンジョンを優先するとデザインのバランスが崩れてしまいます。稜線が外周にぶつかってしまったり、面の繋ぎが飛び出してしまわないよう、制約条件のギリギリのとこを詰めて、少しずつ形状をいじって行きます。そしてようやく右の図のようにパドルの外周を理想のラインに乗せることができました。その完成したCADデータで、いよいよ一次試作です。

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一次試作は、プラスチックのNC切削で行いました。流行の3Dプリンタという方法もあるのですが、今回は剛性を確認するためプラスチックの材質を選びたかったので、NC切削で製作しています。写真は完成した一次試作サンプルです。右写真はCADとの比較。CAD上ではさらに外観デザインの部分まで進んでいますが、試作サンプルの方はまずは装着評価、それから操作性と感触の確認です。出来映えは上々ですが、やはり実際に物を作ってみて初めて見えてくる課題もあります。(つづく)