(工房長です。BEZELの製作記を、当時の文章のまま再アップしています)

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ベゼルがイモビの通信を阻害する件ですが、その後数週間、悩んだり、試したり、いろいろ苦しみました。試作した部品の種類、数知れず。しかし、イモビを阻害しなくなるまでベゼルを削りこんでしまうと、ベゼルは本来のデザインとは程遠いものになってしまいまいます。それでは装着する意味が無い。

プラスティックにサチライトクロームめっきならどうだろうかと、メッキ済みのABSプレートを加工したりもしました。それで、一時はプラスティック化する方針で具体的な検討を始めました。・・・がしかし、本音は「どうしてもステンレス無垢材からの削り出し」にこだわりたい!!

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っと悩んでいるとき、・・・ん、ちょっと待てよ、と。そもそも何でイモビの通信を阻害するのか、もう一度基本に立ち返って考えてみようと。ステンレスは磁性素材じゃないし、シールドするほど包んでもいないのに、それでも電磁波を吸収してしまう理屈なんて何があるのか???・・・考えること数分。おっ、それはもしかして、渦電流(うずでんりゅう)かっ?!

う〜ん、頭の痛くなりそうな絵が出てきましたね。つまり、キーに仕込まれたICチップに給電するエネルギーが、電磁調理器と同じ原理で、ベゼルを温めちゃってると。渦はどこにでも巻いちゃうから、ベゼルの素材の至るところに小さい渦が無数に巻いているとしたら、これは防ぎようがないんだけど、もしかして、なんとも間抜けに、ドーナツ状のベゼルを電流がぐるぐる回っているとしたら...。

思い当たって、我ながら笑ってしまいました。その間抜けぶりに。ベゼルの真中に穴がある(つまり間抜け)から電流がぐるぐる回る、もしそうならドーナツのどこか一箇所を切ってぐるぐる回れないようにしてしまえば、電磁波が渦電流を作れないし、そうしたらエネルギーを吸収されることもないから、誤動作も完全になくなるんじゃないかと。・・・となれば、すぐ実験です。

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ベゼルを金鋸でギコギコ切って、試しに装着してみると...おぉ、実にバッチリ。GOOD!じゃないですか。イモビライザーは正常に動作して、警告灯は出なくなりました。実はこのとき実験的に作った写真の1つが、現在店長がルポに装着して評価してるベゼル、そのものです。この1個、手作りなので、切り口がギザギザです。

ともあれ、転んでもタダでは起きないのがmaniacs流。このスリットをデザイン上のアクセントにしてしまえば、一石二鳥です。あとは、製品の加工方法を考えるだけ。まさか、全部私が自ら金鋸で切るわけにも行かず。しかし、このベゼルを切削加工してくれたメーカーさんに問い合わせたら、「そんな細いスリットできません」とのこと。レーザーカットじゃ切り口に焼き色が着いちゃうし・・・こりゃまた困った〜。

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っで、どうしたかと言うと、なんと水で切ってます。ウォータージェット、またの名を、ハイドロカットと言います。これで、仕込んであった100このベゼルに全てスリットを入れることができました。お〜、なんとも長くて、文字通り「回りくどい」道のりだこと。デザイン的にも、まるで初めからそうしたくてそうしたかのように、バッチリ決まりました。ん?怪我の功名ですか?いえいえ、ここはひとつ、機能美と言っておきましょう。

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そうして、ついにmaniacsのベゼルが完成したのでした。のはずが・・・あれ?何か変です。な、な、なんと、LOCKがLOOKになってるじゃないですか!!これは痛恨の綴り間違えです。あぁぁぁぁ。