工房長です。今日はダミーアンテナベースのアルミプレートを加工しました。DYI好きの方は、アルミの薄板を加工してちょっとしたブラケット類などを製作することがあるかと思います。今日は、アルミの薄板の簡単な切断方法をご紹介します。今回用いたのは1.0mm厚の1050アルミニウム板です。1050というのは純度99%以上のアルミニウムで、柔らかく加工性が良いです。maniacsでは用途に応じて1050、5052、2017などのアルミニウム合金を使用していますが、今回のような簡単な工作には1050が入手性も良く便利です。

P1120774アルミニウムは欠陥感受性が高いという材料特性を持っています。お菓子の個装袋などで、端に少しだけ切り込みが入っていて、その切り込み沿って裂くと簡単に開封できるようになっていますが、あのように切り欠きをきっかけに容易に裂けていく(応力集中)ことを欠陥感受性が高いと言います。


この性質を利用すると、アルミ板はカッターナイフで切ることができます。曲線も比較的自由に切れるのでとても便利です。今回の例では、まずアルミの板にダミーアンテナを乗せて、その外径をなぞってケガキます。それからそのケガキ線にそってカッターで切り込みを入れます。切り込みは板厚の3分の1くらいの深さで十分です。

P1120778それから切り落とす側をプライヤーなどで掴み、使用する側を手で持って、切り込を開く方向にほんの少しだけ曲げます。カットラインが直線の場合は、ある程度曲げても大丈夫ですが、カットラインが曲線の場合は、最初ほんの少しだけ曲げるのがコツです。すこし専門的に言いますと、弾性変形範囲を僅かに超えて少しだけ塑性変形するまで曲げます。

今度はその曲がった分を逆に曲げて元に戻します。部材が平に戻るまでにしておくのがコツです。それ以上に切り込みが閉まる方向に曲げようとすると使用する側までが変形してしまいます。この僅かな曲げの動作を20回くらい繰り返しながら、徐々に切り込みを開く方向の曲げを大きくしていきます。本当に徐々にです。少し専門的に言いますと、疲労させて切り込みを成長させて切断します。

P1120779今回の例では、一旦アンテナ底面の外径をなぞってそれに沿ってカットし、その外径を一旦ヤスリで仕上げてから、ノギスでアンテナのプラスチックの厚み分(この例では2.3mm)だけオフセットしたラインをケガキ、そのラインでもう一度カットしています。カッターで切り込みを入れた通りにカットできるので、このような二段階の外径カットも苦になりません。

あとは、現物合わせで外径をヤスリで仕上げて、アルミ板の端面にテーパーを付けてぴったりフィットするようにします。カットした時点でかなりの程度まで外径寸法の精度が出ていますので、ヤスリでの仕上げが最小限で済みます。この方法ですと、異型のカットは金鋸や金切鋏よりも格段に効率的に行なえます。板厚は慣れれば1.5mmくらいまでこの方法でカットできます。

P1120781これは今回の例での仕上がり状態。ダミーアンテナのベース部分の内側にこの精度でぴったり嵌るようにアルミをワンオフ加工するというのは、これ以外の方法ではちょっと難しいと思います。DYI派の型は、アルミ板のカット方法として、この方法をマスターするととても便利です。まずは0.8mm厚くらいのアルミ板で短めの直線カットから練習するとコツを掴めます。機会があればお試しください。