工房長です。maniacsの特徴として、良くも悪しくも開発に拘ってしまいます。その結果、時間がかかってしまってお客様にお待ちいただくことが多く、いつも申し訳なく思っています。実は、製品化95%は煮詰まっているのですが、今現在も最後の調整を行っています(苦笑)。

写真を見るとたかが樹脂成型部品と見えるかもしれません。製品は最終的に皆様にご使用頂いてご満足いただけるかどうかが全てです。なので、開発の苦労を語ることなど邪道かもしれません。それは承知で、この開発記(3)ではあえて開発における拘りと、技術的な苦労話などをちょっと少し書いてみます。

VW maniacs 06さて、浜松に行って設計を詰め、金型のGOを掛けて待つこと2ヶ月、金型が完成して成型サンプルが上がってきました。一発目の試打ちを「トライワン」略してT1(ティーワン)と言います。今回T1では、4種類の材料で打ってみました。これで形状の精度、強度・剛性、表面の肌などを確認します。


写真の左から、PC-GF10(ポリカーボネート、ガラスファイバー10%)、PA-GF50(ポリアミド=ナイロン、ガラスファイバー50%)、PA6(6ナイロン)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)の4種類。成型の状態はどれもあまり良くありません。ある程度は予想していましたが、ちょっとそれ以下です。

写真でもわかるように、ガラスファイバーを入れていないものは形状精度が悪く、面に歪み(ヒケ)があります。しかも感触が柔らかすぎです。ガラスファイバーを50%も入れれば形状は安定して剛性も出るのですが、表面状態が荒れてしまいます。本命のPC-GF10は形状も肌も今一歩で中途半端な感じ。

なぜこのようになるのかというと、設計の段階で無理をしたことが成型の難しさになっています。本来は各部の肉厚を揃えて、成型しやすい形状に設計すべきなのですが、手作りのワンオフで決めた操作性最優先の形状をできるだけ忠実に再現しようとした結果が、このようなことになってしまったわけです。

VW maniacs 04
この段階で、併せて両面テープの評価も行います。両面テープを厚くすればフィッティングは出しやすいのですが、一方で操作感がグニョっとした柔らかい感触になってしまう可能性があります。両面テープが薄いと、密着させるのに形状精度が難しくなってきます。


部品の形状は、相手物の形状に両面テープの厚みを足した形状になっている必要があるので、両面テープはできるだけ早い段階で確定している必要があるのです。このあと金型を0.1mm単位で追い込んでいくのですが、その際に両面テープの厚みも考慮した形状に追い込んでいきます。

VW maniacs 05両面テープは、住友3M製のVHBテープと言われるシリーズです。車内温度に対応した耐熱スペックの観点から、このシリーズが最も安心して使用できるのです。基材の固さを2種類×厚みで3種類、合わせて6種類のサンプルで評価しました。スペック表と睨めっこしながら、実際の装着評価を行います。


装着評価では、当たり加減も確認します。相手物に着色して張り合わせ、色の転写具合によって当たっている場所を見て、それを参考に金型を追い込みます。インスタント型取り用の特殊樹脂も使用しました。プラスチックの成型材料によっても形状精度が違ってくるので、当たりを確認しながら材料も選定を進めるのは、なかなか複雑です。

VW maniacs 03最近になって、複数のメーカーからパドル周りのパーツが発売されていますが、これはお互いに意識したわけでも、競争しているわけでもありません。たまたま偶然にタイミングが近くなってしまったのです。こうした需要が顕在化してきたのだとも解釈できます。


そうした中で、maniacsのパドルエクステンションは操作性に主眼を置いています。デザイン性や高級感など、装着したこと自体の満足感もさることながら、maniacsは、パドルをより積極的に使いたくなるような、そして実際に使ってノーマルよりも操作し易いと感じられることに徹底して拘って開発しています。

VW maniacs 01その拘りを単なる精神論で終わらせないために、T1の段階で車輌への装着評価を行いました。実際に車輌に装着して運転し、いろいろな状況下で操作性を確認します。パドルを使わない運転操作に支障がないことも非常に重要な要素です。いかに使いやすくても、使わないときに邪魔に感じるようでは危険だからです。

試作パーツを装着した車輌で、私たち自身がごく普通の街乗りや高速道路を走行し、日常的に使用してみただけでなく、丸山選手のカップカーにも装着して、サーキット走行の場面でもテストしてもらっています。レースのクリティカルな走行条件下でこのパーツが運転操作にどのように作用するのか、妥協なく確認をおこなっています。(あくまで確認評価のためです。商品としてはサーキットでの使用はサポートしていません)

VW maniacs 02そんなわけで、T1でできうる限りの確認評価を行い、金型の詳細を追い込んでいきました。しかし結果的には、今回の開発でT4までいっててしまい、つまり金型完成後に3回も手を入れたことになります。プラスチックモールド設計の分野では、T1一発で完成するのが腕の良い設計者で、何度も弄るのは腕が悪いからというのが一般認識です。

つまり、決して自慢できるような話ではなくて、むしろお恥ずかしいことなのです。しかし、妥協せず調整を行ったということだけは言えます。形状精度と表面状態については、さすがの工房長もこれで限界かというところで「これでほぼ良くなったと思います」とサンプルを見せたところ、店長から厳しい駄目出しをくらって、さらに上の品質にチャレンジした経緯もありました(涙)。

maniacs DSG Paddle Extension 開発記(1)
maniacs DSG Paddle Extension 開発記(2)
maniacs DSG Paddle Extension 開発記(ちら見せ)
そんなこんながありながら、完成にむけて一歩一歩着実に進んでいきます。(つづく)